『イタリアの街ガイド』第5回 フィレンツェ 無料で見るアンドレアの傑作

09/12/2018

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イタリア旅行コラム『イタリアの街ガイド』
フィレンツェ アンドレア・デル・サルトの傑作をタダで見る~

 

1982年世界遺産に登録されたフィレンツェの歴史地区。ルネサンスが花開いた芸術の都は、どこを見渡しても貴重な美術品で彩られている。今回は、街中で“タダで!”多くの作品を見ることができるフィレンツェの大画家アンドレア・デル・サルトを紹介。

アンドレア・デル・サルト《自画像》
ウフィッツィ美術館、フィレンツェ

レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロに続く巨匠

アンドレア・デル・サルトは1486年にフィレンツェで生まれ、1508年頃から活動を始めた。
彼の画風の特徴はピッティ宮に所蔵されている《ブラッチの聖家族》をみてもわかるように、「ミケランジェロの人物構図」、「レオナルドのアンニュイ感漂う陰影」「ラファエッロの可愛らしい女子供たち」「フラ・バルトロメオの色彩と背景舞台」と、彼より前の世代のフィレンツェで活躍した画家たちのいいとこ取りなのが特徴だ。

アンドレア・デル・サルト《ブラッチの聖家族》, 1523年頃
 Galleria Palatina (Palazzo Pitti), Firenze

アンドレアの初期作品は、サンティッシマ・アンヌンツィアータ聖堂キオストロ・デイ・ヴォーティ(祈りの回廊)でも見られるが、こちらは、ちょっと変わった彼の2人の弟子、ポントルモとロッソ・フィオレンティーノの壁画のほうで有名だ。
ポントルモ《聖エリザベツのご訪問》 1516年 Chiostro dei Voti, Santissima Annunziata

 

 

美しい洗礼者ヨハネ像で売れっ子に

 

 

ドゥーモからサンマルコ聖堂方面に徒歩20分ほどに位置するスカルツォ聖堂回廊(キオストロ・デッロ・スカルツォ)にアンドレアの傑作はある。入口は目立たず、知らずに通り過ぎてしまいそうなくらい小さな回廊だが、非常に質の高い作品が見られるため、ヴァザーリによると制作後に「画工の学校」となってしまったほど。

この回廊はグリザイユという白黒を基調とする単色画で仕上げられている。この技法は、壁に浮き彫り効果を表すためによく使われる手法だが、顔料に土や木灰を使うだけなので、安上がりになる。

 

金がない注文主と名が売れていない若い画家の利害一致

注文主である洗礼者ヨハネ同信会は、アンドレアにほとんど報酬を支払っていない。実入りの少ない仕事をアンドレアが引き受けた理由は、公共の場に物語画を描けるからであった。まだ若く、名が売れていない画家としては自分の実力を多くの人に見てもらうチャンス!

あのラファエッロだって20代前半を過ごした4年間のフィレンツェ時代には、一般の家庭内に飾られる「聖母子像描き」をしていたわけで、大規模な仕事は、なんと1件しか任されていない。
なぁアンドレアよ、ちょっと、うちの回廊を装飾してくれない?それを見た誰かが仕事をくれるかも?」と同信会が若い画家に頼んだ光景が目に浮かぶ。

画家の見本帖 Taccuino

上のような会話があったであろうことは、ここに描かれた絵柄が、他のアンドレアの作品の中に頻繁に見られることから確認できる。《民衆への洗礼》背景右にいる子供と、ボルゲーゼ美術館の《聖母子と聖ヨハネ》ヨハネ像の構図は全く一緒だ。
アンドレア・デル・サルト《民衆への洗礼》1517年
 Chiostro dello scalzo, Firenze
アンドレア・デル・サルト《聖母子と幼児聖ヨハネ》1518年頃 
Galleria Borghese, Roma

 

 

フィレンツェで一番美しい最後の晩餐

この「アンドレアの見本帖」から生まれた最大の傑作が中心街から少し離れたサン・サルヴィ聖堂にある《最後の晩餐》だ。 スカルツォ聖堂回廊の《洗礼者ヨハネの斬首》の背景の建物の上から、出来事を見ている人たちが、そっくりそのまま最後の晩餐の傍観者へと使われている。
アンドレア・デル・サルト《洗礼者ヨハネの斬首》
 1523年 Chiostro dello scalzo, Fireze
アンドレア・デル・サルト《最後の晩餐》1525年San Salvi, Firenze

 

美しすぎて破壊の危機を免れた!

この《最後の晩餐》は、あまりに美しすぎて以下のような話が伝わっている。

1529年、カール5世との戦でフィレンツェが略奪にあった際、
街の城壁の外にある修道院や病院などあらゆる建物を破壊しようとした敵軍は、サン・サルヴィの聖堂と鐘楼を破壊し、更に修道院の奥へと進んでいったところで、はっと我に返った。そこにはこの最後の晩餐があり、(…)破壊の手を止めてこの傑作を保存する事にした」(G.ヴァザーリ1565年)

 

*

多くの美術品が美術館に収蔵されてしまう昨今、アンドレアのスカルツォ聖堂の回廊サン・サルヴィの《最後の晩餐》は、今でも500年前にアンドレアが制作した時の空間をたたえている。これだけ保存状態がよく、しかも傑作が、描かれた当時の場所で見られるのは幸運というしか言いようがない。

 

 

 

■■   Access   ■■■■■

スカルツォ聖堂回廊
Chiostro dello Scalzo

開 : 
月、木、土(第1,3,5)、日(第2,4)8:15-13:50

 :  無料

 

サン・サルヴィ聖堂
Chiesa di San Michele in San Salvi


 火曜-日曜 8:15 – 13:50
月、1/1、12/24
無料
Via di San Salvi 16, 50135 Firenze

 

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